平成9年度情報教育指導者講座 中学校・数学(神奈川県)


平成9年10月1日  10時15分から12時30分


「数学教育に活用されているテクノロジーの紹介T(グラフ電卓)」


国立教育研究所 瀬沼 花子



◆グラフ電卓の活用について

 日本はグラフ電卓を生産している国でありながら、授業ではグラフ電卓はあまり利用されていないのが実状である。イギリスやアメリカではグラフ電卓が多く利用されている。高等学校では、グラフ電卓は、最近注目され、多くの学校で取り入れられるようになってきた。しかし、中学校では、まだ、あまり実践例はない。
 英語の授業や試験に辞書を持ち込むように、数学に電卓を用いてもよいのではないかと考える。また、コンピュータはメモリも大きく様々なことができるが、グラフ電卓のよいところは、本体の大きさが小さいことにあり、それなりの生かし方があるのではないかと考える。数学を探求するために道具を使うのでなければならない。
 日本では、計算はできるといわれるが、計算の意味を考えるためにグラフ電卓は有効であると考える。
 関数では、自分で数値を変化させて、グラフ電卓によりグラフを描かせることにより、その意味を自らつかませることもできる。
 方程式を解くとは、数値を求めるだけなら今は電卓でできるが、そのグラフ的な意味など、グラフ電卓を使うことにより豊かな理解をもたらすことができる。
 単に数学ができるという認知面だけでなく、情意面にも着目したい。むやみに問題を解くだけでなく、多少の苦労をしたり、解けた喜びを味わったりさせたい。
 最近、再び、テクノロジーを使うと学力が低下するという考えが出てきているが、授業でテクノロジーを使って、試験等でテクノロジーを使わないで評価するのならば、評価が下がって当然である。テクノロジーを使った評価をすべきである。
 数値、表、グラフ等を用いて、内容を表現して、伝達する活動により数学的コミュニケーション能力を高めることができ、グラフ電卓はその点で有効ではないかと考える。


◆グラフ電卓の各機種の紹介
★CASIO
 OHPモデル、VTR出力モデル、パソコンリンクモデル、中学生向けモデル等もある。
 また、レンタルシステムがあり、無料で関数電卓を研究会等のために1ヶ月間貸し出すシステムもある。



★SHARP
 海外では発売されているが、新製品が国内でも近いうちに発売される予定である。ペンを使って入力をすることができる。今までは式を入力してグラフを変化させるだけであったが、今回の製品はグラフを変化させて式をさせることができる。スライドショー機能もある。



★TEXAS INSTRUMENTS
 アメリカの教育者の方が開発したものである。教育的価値が機能としてあることが重要である。コンピュータの操作に関心が向いてしまっては、本来の目的からはずれてしまうが、その点で生徒が行った作業が残っているなど、数学の目的を達成するために有効な機能がある。